shimoo_design

ARTIST
木工職人 shimoo designshimoo design

13582421_1025989004145081_495374450_o

富山市八尾町にあるshimoo design

 「おわら風の盆」で全国的に有名な富山県富山市八尾町。細い山道を進むと、心地よい風が通る高台にシモオデザインはある。ここはユニット作家として活動する下尾和彦・下尾さおり夫婦の住まい兼アトリエとなっている場所だ。潔く、合理的な「美しい道具」をコンセプトに、日本の文化や美意識を現代のライフスタイルに落とし込むことを目的としたshimoo design。自然に恵まれたのどかな環境で、主に木製家具やインテリア小物のデザイン・製作を行い、MADE IN JAPANを基本とした、流行や時代を感じさせない「日本の美」を追求している。

IMG_9477

shimoo designの住まい兼アトリエ

 夫婦共に家具づくりの修業を経て、独立後、お世話になっている棟梁に協力してもらいながらも、そのほとんどを夫婦二人で造ったという住まい兼アトリエ。作業を終えたばかりの広々とした工房には木の香りが立ち込め、とても心地がよい。どこかゆったりとした空気が流れるリビングは一角をギャラリーとし、まるでモデルルームのようにすっきりとシンプルに作品を配置。見渡せば、自身の作品はもちろん、様々な作家の素敵な器や花器も飾られている。個展などで仲良くなった作家の作品を購入し、飾ることも。ここに置く作品の一つひとつは、家族で使うものゆえに二人で相談して決めることが多いのだとか。二人が協力して心地よいくらしを作っていることに仲睦まじい様子が窺える。また時折、摘んできた草木を花器に生けるさおりさんの姿も。さおりさんが茶道を習っていることもあり、お茶関係のコーディネートが多く見られるのも特徴だ。

IMG_9482

ふたりでつくる心地よい道具

 学生時代からお付き合いが続きご結婚された下尾夫妻は、いつも行動を共にするおしどり夫婦。そんな二人が紡ぎ出すshimoo designは、互いの意見を尊重し合い、認め合うことで作り上げる夫婦ユニットの作品だ。 彼らの作品は全て手作業。丁寧に時間をかけて無垢材を愛でるように削り出し、一つひとつを生み出していく。着色・塗装までをこのアトリエでこなし、仕上げの過程を経ると、一枚の木が美しい道具に生まれ変わる。木目の美しさを気に入っていることから、材質は全てタモ材を使用。それを無垢の状態から、ベルトサンダーを用いて削り出し、二人で決めた心地よいラインを出すことに集中しながらものづくりを進めていく。

IMG_9506IMG_9511

 デザインは互いに出し合った原案をベースに、さらに意見を積み重ね完成へと導き出してゆく。「二人が納得したものでないと世の中には出さない」と話す和彦さん。そんな和彦さんがデザインした試作ができると、まずさおりさんに見せるのだが、大抵いつも「なんか違う」と言われるそう。 例えば、トレイの縁の反り上がりについては、1mm単位で角度を調整しながら試作を繰り返す。それを見て、再び「なんか違うなあ」ということになれば、少し高さを変えるなど、お互いに意見を出し合いながら試作を進めていく。作品によっては数十回作り直すこともあるほど。こうして何度も試作を積み重ねていき、やがて「これだ!」と二人が納得できる作品にたどり着く。 和彦さんは言う。「さおりには絶対音感ならぬ、“絶対ライン”の感覚があって、たくさんある線の中から一番良いラインを見つけるのが本当に上手なんです。このやりとりを経て、自分のセンスも磨かれてきたのではないかなと思っています」。まさにそれは、二人の感性のコミュニケーションから生み出されたしっくりと心地のいい作品なのである。 このようにして完成したshimoo designの作品は、少し緊張感のある“シャープな直線”と色っぽくて“柔らかい曲線”が融合し、とても美しい。

IMG_9504

shimoo designが誕生するまで

 富山県高岡市出身の下尾和彦さんは、伝統工芸品である高岡銅器の原型師の父親の息子として育ったが、父親とは別の木工の世界へ入った。 和彦さんは初めから木工作家になりたいと思っていたわけではなかったが、ものを作ることが好きだったことから工芸科のある高校に入学。そこで漆器、鋳物、木工から科目を選択する必要があり、なんとなく木工を選んだのだという。それが木工作家の道へ進む始まりだったのだ。その後進んだ短大でも、木工の作品を作り続けてきた。 その短大でさおりさんに出会った。さおりさんは言う。「(和彦さんは)いっつも遅刻してきたりするから、この人、大丈夫かなあと思っていたんですが(笑)、作品を作ると、なんかすごいものができあがるんですよ。卒業制作が特に素晴らしくて・・・・・・。“椅子の一生”というタイトルで、同じ椅子が人の成長と共に変化していくという作品でした」。 和彦さんは短大卒業後、飛騨高山にある家具の工房に20歳の若さで就職。そこで家具づくりの面白さを見出し、いつしか「誰もやらないようなものをつくりたい」と思うようになった。一方さおりさんは、純和風の住宅を手がける工務店で、家具職人として勤務。日本を感じられる家具を作り続けてきた。 そして和彦さんが26歳の時に、勇気を持って独立。勤め先を辞めて、現在のアトリエを造った。最初は下請けの仕事をもらって生計を立てていたが、オリジナルの作品を作りたい思いもあったため、独立した翌1998年に「工芸都市高岡クラフトコンペティション」に出品。そこで見事グランプリを受賞。そこから自分たちのオリジナル作品だけを作ろうということになったのである。shimoo designの始まりだ。

IMG_94851

shimoo designの作品たち

 shimoo designの作品は、家具からインテリア小物まで多岐に渡る。

・立礼卓
無駄なものを削ぎ落とした引き算のデザインから生まれた作品。元々は、友人であるお茶の師範より依頼を受けて完成した立礼卓は、従来の固定概念にとらわれず、新しいスタイルを提案する。シンプルなデザインゆえに、細部に渡るディテールにこだわり、木目の美しさを表現。当時はあまり類を見なかった洗練された佇まいで、軽やかさとスタリッシュさを演出する。 受賞を機に、そのスタイルに自信を持ち、さらに少しずつ改良が重ねられている。2008年には、隈研吾建築都市設計事務所が設計した、パリのサンジェルマンデプレにある「寿月堂パリ店」に「CHAJOKU」の立礼卓を納品。今では国内外問わずオファーの声が届いている。

IMG_949713575549_1025989024145079_1298814731_o

・縁具
お母様を亡くされた際、従来の仏壇のルールに違和感を感じ、もっと自由で今の時代に受け入れやすいスタイルのほうがいいのではないかと考え、2008年に完成した、新しいスタイルの仏壇。両親が大事にしていた形見を飾り、故人を偲ぶというコンセプトを基に、高岡の仏壇問屋とコラボレーション。扉も飾りも全て取り去り、リビングにも置けるようなデザインに仕上げた。いつでも身近に感じられるようにという想いが込められている。
・器
下尾さん夫妻が「L’évo レヴォ」の谷口英司シェフと出会い、「県外のものを入れず、富山一色にしたい!」という谷口シェフの熱い想いを組んで生まれた木の器。オープン前にレストラン内のテーブルや器をオーダーされてからのお付き合いで、その後は谷口シェフの紹介もあり、滋賀県の「徳山鮨」をはじめ、様々なレストランからのオーダーが増え続けているそう。

IMG_2180-800x533

飾るものから使うものへ

 国内はもとより、今では海外からも認められてきているshimoo design。最近では、フレンチレストランや鮨屋などの飲食店でも下尾夫婦の作品を見る機会が増えてきた。それは和洋問わず、様々な料理を受け止めてくれる器だからであろう。そんなshimoo designの可能性について、下尾夫婦も独立当初から現在に至るまでの作品作りに対する気持ちの変化が、やはりあったようだ。 和彦さんは言う。「最初の頃は人を“驚かせたい”っていう気持ちが強くて、そういうものを作っていました。それが段々と自分たちが“使いたい”と思うものを作ろうと変化してきたんです」と。 最初は家具や盆栽に敷くトレイなどを作っていたが、今は食器など“使う”道具を製作する機会も増えている。これまでプロユースでは敬遠されがちだった木製の食器も、最近ではレストランからオリジナル食器制作の依頼・相談を受けることが多くなった。 どれも他に主役となるものがあってはじめて成り立つ道具だが、そのものがあるからこそ心地よい空間が生まれる。そういうもの、つまり“潔い、くらしの名脇役”を作り続けたいのだと。

IMG_9518

shimoo designの今後の夢とは

 下尾夫婦に今後の夢を聞いてみた。「なかなか言葉での表現が難しいですが、小さくてもいいので、自分たちの“今”を込めたギャラリー兼ショップが欲しいと思っています。全国各地からシモオデザインを求めて来ていただけるような。現実的には今の自宅の改装・改築から始まるような気もしますが。 例えば、我々の代表作でもある入れ子式立礼卓を設ける立礼用の茶室も、現在構想中です。今後、お茶の世界をもっと現代的にしていけたら・・・・・・と。また新たなお茶人口が増えるように、遊びながら発信していきたいと思っています。それから浮様シリーズももっと全国的に広めていくつもりです。そのためにはまずは生産力をつけるべく人材育成からですね!」 独立当初の大変な時期から互いを想い、手と手をとりあってきた下尾夫婦。一つひとつが手作業ゆえに生産量が限られてしまうが、彼らの手により紡ぎ出された作品たちは、道具としての機能を全うしつつ、芸術作品のような威光を備える。それが今後、どのように国内外に発信され、用途が広がっていくのだろう。まだまだ進化するshimoo designの今後に目が離せない。

参考:「SHIMOO DESIGN」夫婦で生み出す洗練された美しい日本の道具たち/WEBマガジンlade
http://lade.jp/articles/people/37437/


DATA.

shimoo design

住所
富山県富山市八尾町松原251-5
電話番号
076-455-3191
URL
http://www.shimoo-design.com/